ナイト・マーケット・グルーヴィング

夜の9時を待たずして、君は大声を上げ始める。

「バローットバロゥーット

 チョンサンデパートとバーナムパークの間、大通りにかかる歩道橋の下で、温まったバロットをたくさん抱えた君は、道ゆく人に次々と声をかけ続ける。今日は金曜日。すこし肌寒い。孵化直前のアヒルの卵がよく茹で上がっている。客の冷えた手のひらに、君はひとつひとつ丁寧に、バロットを差し出していく。そのままでも美味しいけれど、ビネガーをつけたり、塩を振りかけたりしても絶品であることを、君はよく知っている。ほっこりした食感に、少し刺激のあるスパイスがよく合うんだ。

バロット売りは、君だけじゃない。バギオのナイト・マーケットには、たくさんの商人が押し寄せて、自らの店に客を引き寄せようと必死だ。だけれど君は、店舗が密集した道の真ん中あたりには、決して行こうとしない。人混みに疲弊した客たちが脇道に寄り、お互いに雑談をしながら休憩している所に、大きなザルを持って歩み寄る。人と話すことは得意じゃないだろう。それでも必死に、バロットが温かいうちに、とっておきのビネガーがなくならないうちに、明日美味いジョリビーが食べられるように、君は売る。

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