ブレントウッドで君に初めて会った時、正直良い印象を抱かなかった。あまり笑わず、目を細めてこちらの発する言葉のひとつひとつをジャッジしているようで、少し苦手だった。

君はいつも何かに不満を持っていたし、それをあからさまに話すのではなく、心の奥にそのモヤモヤを抱えたまま、世の中の不条理にも仲間同士のいざこざにも顔を歪めた。人生にはどうにもならないことがたくさんある。そんな、どこか諦めに似た考えを持ちながら、その限界に気づいているかのように、超然としていた。

・・・

私には日本人の血液が流れている。浮かない顔をして君がそう告白したのは、出会って2ヶ月ほどたった日のことだっただろうか。君の4分の1、世代のことや国同士の暗い歴史を思い起こせば、君がその事実をあまり語りたがらないことを、僕は容易に理解ができる。きっと君の周りにる多くはその事実を聞かされていないだろうし、これからもずっと知らないまま君と付き合っていく。だけど君は、それを抱えながら、多くの仲間に囲まれながらもどこか孤独感を拭えないまま、高原の地で生きていかなくてはならない。

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君の生まれ育った街まで、ジプニーを何度か乗り継いで向かう。田畑の広がる農村のような集落は、綺麗な夕日の落ちていく長閑な場所だった。君の落ち着きのない弟も、少し大人っぽすぎる妹も、きっといつかこの地を離れて、その拠点を移していくに違いない。顔こそ君ほど東アジアっぽくはないけれど、同じように独特なバックグラウンドに気がつき、意識し、時には苦しむかもしれない。歴史は消え去らないのだから。その時はきっと君が一番に寄り添うだろうし、厳しく叱ることもあるだろうし、生きるとはそういうことだ、なんて立派な説教をする日も来るだろう。そんな出来事を経ながら、君の中に溜まっていくモヤモヤした何かが、徐々に薄れて、やがて解消する日が来れば良いと、ふと思うのである。

 

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