排気ガスと若者の熱気が溢れるマグセイセイ・アヴェニューから、小枝のように分かれた小さな道が、パブリック・マーケットの中へ伸びていく。ケバブのような肉の塊を売る黄色い店を目印に、ながらかな小さい小道が、右手に緩やかなカーブを描く。その道を曲がりきってすぐ、ふたつのコーヒーショップが並んで立っている。

ひとつめは、小さくて古いビーンズショップ。アラビカもロブスタも、ソイビーンズも扱う、こじんまりとしたショップだ。その奥に立つのが、立派なロゴと内装を構えた、大きなビーンズショップ。高級種「コピ・ルアック」やコーヒー器具なども揃えた、今っぽさを感じる店。

週末多くの人で賑わうマーケットの中心部にあって、街のコーヒー・カルチャーを支えるふたつの店に、多くの人だかりができている。

 

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ベンゲット・コーヒー・カルチャー

同じフィリピンでも、中部のセブと北部高原地帯のバギオのふたつの都市で生活して感じる一番の違いが、カフェの数だった。熱帯気候で年中暑く雨も多いセブでは、ホットコーヒーなど飲んでいられない。大きなショッピングモールにはスターバックスのようなチェーンこそあるものの、市場でコーヒー豆を見かけることは稀であるし、チェーン店以外のカフェを見かけることも多くはない。

一方のバギオは、「サマー・キャピタル」と呼ばれるように、夏でも気温が20度前後、高原地帯の過ごしやすい気候に恵まれている。中心部の丘の上から伸びるメインストリートには個性的なカフェが並び、裏路地にひっそり立つ店も多い。山を登る途中に立つ、マウンテン・ビューを売りにしたカフェも良い。

ニューヨークやロンドン、東京のような大都市に広がるコーヒー・スタンドほどモダンなものではないが、大自然と伝統を受け継いだクリエイティヴな空間に、多くのハイランダーたちが集う。家庭でもコーヒー好む人々が多く、パブリック・マーケットに並ぶふたつのコーヒーショップには、上質な豆を求めて多くの市民が列を作っている。バギオの人々は、高原といういわば閉鎖的な地域で、ある種のカルチャーを形作っているように見える。

 

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カルチャーの未来を照らすロードマップ

今年3月、700を超えるコーヒー産業のステークホルダーたちがバギオに集まり、国が抱える課題や展望に関してディスカッションの場を設けた。

国内のコーヒー需要が急速に高まる中で、その生産は低迷し、産業における課題感が強まっている。インスタントコーヒーの原料となるロブスタを中心に、高級種とされるアラビカなど、国内で4万トンを超える生産を誇るもその量は年々現象し、徐々に輸入に頼っているのが現状だ。

こうした事態に官民連携で立ち向かう「フィリピン・コーヒー・ロードマップ」は、貿易産業省やネスレ系の参画、そして大統領デュテルテの署名により効力を発揮し、国のコーヒー・カルチャーの未来を少しずつ照らし始めている。

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高原の若者とコーヒー

セッション・ロード沿いのジョリビーを目印に曲がり、坂道を登っていくと、左手に木材を積み上げたような建物が現れる。小さなカフェが密集した廃墟のような場所は、「未完成」というキーワードがよく似合う、大自然バギオらしい異空間である。

ジョリビーのチキンやマクドナルド、オレオクッキーや薄味のサンミゲルに飽き飽きした若者は、メインストリートから少し外れた廃墟に集い、パスタやサンドウィッチ、コーヒー、アイスラテをオーダーし、海外ファッションや最新アプリなど、華やかなトークに熱中する。スキニージーンズにシンプルなTシャツのスタイルは、穏やかな高原地帯の、アクティヴな若者のライススタイルを良く表している。街のカルチャーをリードするようなカフェは、海外大都市のミニマルで洗練された、ミレニアルズのワークスタイルと融合したような空間ではなく、高原らしい大自然に溶け込み、農作物としてのコーヒーや食べ物を自然の中で味わうような、ナチュラルでトラディショナルなプレイヤーであるようだ。国の未来を支える産業は、バギオのコーヒー・カルチャーを起点に、彼らは独自のスタイルで若者を魅了している。

 

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