パブリックマーケットのエスノグラフィ

2018/08 |  MASATO USHIMARU

産業化、観光地化の進むフィリピンの中でも、バギオは依然として異彩を放っている。

街全体を眺めたくて、丘の上に立つSMモールを目掛けて駆け上がる。絶景に満足し、今風の若者も物乞いも混在するセッションロードを下って行くと、その突き当たりに広がるのが、バギオ最大のパブリックマーケットだ。

生肉の臭いが鼻を刺激する。立ち話をする老婆たちの声は掠れ、脇道では犬同士が喧嘩をしている。汚れた猫は、道端に転がる腐乱した果実に口をつける。

コーヒーショップの前でビニール袋を売る彼は元気だろうか。木彫り雑貨屋の彼女は、日本に行きたいという夢を叶えたのだろうか。大雨のアシンのバス停、帰路につく老婆は無事家にたどり着いただろうか。盲目のマッサージ師はまだあの店にいるのだろうか。ナイトマーケットの喧騒を鋭い目つきで見つめた彼女は、いま何歳になったのだろうか。

 五感で味わうバギオ。自己満足程度にかじったエスノグラフィと、バギオ芸術への熱狂的な愛と敬意による、これもまた自己満足的な実践である。