旅人は蚤の市に熱狂する

2018/07 |  MASATO USHIMARU

エスニック香る屋台の人混みをかき分け、進む。孵化しかけの卵を蒸した料理「バロット」は、ヴィジュアルはさておき、ビネガーや塩を着けて思い切り頬張る。鳥の雛の串焼きは腹を壊すと、敬虔なクリスチャンである老婆が教えてくれた。今夜は、スパイスの香りが立つスープも良いかもしれない。

古着が並ぶ区画を抜けると、綺麗なヒジャブを纏ったムスリマ[イスラーム女性]たちが姿を現す。女たちが売る銀細工は、ネイビーの布の上に整えて並べられ、旅人の心を一瞬にして虜にする。細かな装飾を施されたアクセサリーは、夜市を照らす明かりを吸い込み、反射し、コントラストを作り出す。夏の夜市は心を踊らす。

大雪のキエフ。氷点下17度の日曜日、線路沿いに並ぶアンティークは、今にも雪に埋もれそうだ。寒さに耐えかねたか、一人の青年が店じまいを始める。旧ソ連のバッジを売る男は、頑なにディスカウントを拒否する。どうやらお気に入りのコレクションらしい。様々な動物をかたどったペーパーウェイトは、適度な黒ずみを纏いながら、道ゆく人々の視線を集める。

クラクフのユダヤ人は、古いドイツの食器を好むらしい。ユダヤの星が描かれたポインターは、彼らの生活に欠かせないものだろうか。色と形の違う3つのナイト駒は、長らくチェス指しに愛されてたに違いない。

採れたての果実から古びたアンティークまで、その土地のあらゆるものに出会える蚤の市。街の顔であり、胃袋であり、倉庫であるイヴェントは、今日も図太い声で旅人を呼んでいる。

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