キエフの地下鉄は、世界で一番深いところを走るらしい。

無愛想な駅員に4グリブナを支払うと、おもちゃのようなコイン(電車に乗るためのトークン)を手渡して来た。「旧ソ連の香り」が一体どのようなものか、想像しても全くイメージが湧いてこないが、空港から市内に向かう泥だらけのバスや、不気味な音を立てて地下に潜っていくエスカレータがきっとそれを指すのだろう。

中心部から20分ほど、大雪の中でシートを広げた人々は、使い古された食器や衣類、雑貨を次々に並べていく。凍える手先で掴んだペーパーウェイトは、タツノオトシゴの形をして、ずっしりと重い。

市場の一角に、ソヴィエトの雑貨を売る青年がいた。英語は話せないらしい。ロシア語を誤読した私の発言を、細々と訂正していることだけが伝わってくる。青いシートの上にはソヴィエト軍における階級を示すメダルが並んでいる。スターリンが描かれたものは貴重なのだそう。

「ソ連っぽさ」「東の香り」を言葉で説明することはまだできないが、戦時中に役割を果たし、現在は世界中のコレクターたちに愛されるものが多数存在することは確かのようだ。

「アンティーク」「ヴィンテージ」と聞くと、富裕層が嗜むもの、知識豊富なコレクターが集めるもの、という印象をどうしても持ってしまう。だけれどキエフの蚤の市には、日用品から希少なアンティークまで、多種多様な雑貨が集い、市民が足を運ぶ。その敷居の低さには驚かされた。古く愛されたものは、もっとポップに、私たちのライフスタイルの中に在って良い。そんな考えが、より確信に近づいたのは、雪化粧がよく似合うキエフのおかげでもある。

[  READ MORE ?  ]

#3

クラクフに光るユダヤの星

COMING SOON!

#4

真鍮売りの老婆

COMING SOON!

#5

ラトヴィアの戦火、ナチスの忘れ物

COMING SOON!